◆ 特色 ◆ 担当医の紹介 ◆ 取扱う主な疾患 ◆ 治療手技・手術 ◆ 診療実績
特色
- 当科は、須磨区、垂水区を中心に神戸市全域にわたりこれまで悪性腫瘍、母子医療など国立病院としての政策医療を行うとともに市域の中核的病院として地域医療にも貢献して参りました。様々な合併症を持った妊婦さんを取り扱うのみならず婦人科悪性腫瘍や子宮頚部異形成に対する最新知見に基づいた集学的治療、良性腫瘍に対する内視鏡を用いた治療、尿失禁や骨盤臓器脱に対する手術療法など幅の広い診療を行っています。
- 産科・周産期について
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1.チーム医療で妊婦健診をしています。
当科は、当院の理念である「すべての人の立場にたった医療サービスの提供」を基に、出産される方が安心・満足できる出産を目指しています。そのような出産をするには妊婦さん自身が、健診を受けて自分の生活について自己管理をすることがとても重要です。当科では最初に、何週ごろにどのような診察、検査、保健指導をするかの説明をさせていただき医師による診察の後には助産師による保健指導を行うことで妊婦のみなさまをサポートしています。かかりつけの妊婦さんはもとより、里帰りや紹介により、来られた妊婦さんの不安や疑問の解消につながっており好評です。
2.ハイリスク妊娠に対応しています。
妊婦さんに妊娠高血圧症候群が出現した場合や、膠原病、糖尿病などの合併症がある場合は、当院の専門各科との協力のもとに、無事に赤ちゃんが出産できるように治療・援助します。また胎児に異常が疑われる場合など早期に発見できるように、胎児超音波検査・胎児血流波形分析などの最新の医療技術を用いて診断に努めています。このような診断・管理の結果、当院で対応困難な場合は、より高度の周産期医療施設に紹介・搬送する場合があります。
3.自然分娩を基本に、安全に出産ができるように努めています。
出産は自然分娩を原則にしています。御希望により、ご主人に立ち会いをしていただくこともできます。陣痛から、出産、産後まで生活できる居宅のような環境のLDRも1室あります。医師・助産師が分娩監視装置などで胎児の状態を観察しながら、安全に出産できるように援助しています。母体にB群溶連菌(GBS)がある場合や前期破水の場合は規定の手順に沿って抗生剤を使用し感染対策をしています。予定日が過ぎても分娩が開始しない場合や母子の状態によって誘発分娩をする際には、医学的適応に基づき同意を得た上で母子の安全に留意して実施していきます。帝王切開を行う場合は麻酔科と共に疼痛を少なくできるように努め、生まれた児に異常がなければ、帝王切開でも正常分娩と同じように母と子の肌と肌を密着させるカンガルーケアを実施しています。
4.母乳育児によって母と子の絆を深めます。
出産後、これからの育児につながるような入院生活が送れるように、ご家族で育児をしていくのに最も自然で、赤ちゃんにとっても良い環境は何かを考え、当科では「母子同室」「母乳育児」をおすすめしています。当院は、国の政策医療である成育医療の近畿地区基幹医療施設です。また、2009年には世界保健機構とユニセフにより「赤ちゃんにやさしい病院(BFH:Baby Friendly Hospital)」として認定されました。
5.これからの母と子の健康のために、他科と連携しています。
生まれた赤ちゃんは全員、入院中に小児科、整形外科の診察を受けていただいています。合併症をもって妊娠・出産された方は、産後に必要に応じて専門の各科に受診をおすすめすることがあります。これらは総合病院の強みといえるでしょう。
- 婦人科について
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1.疾患の早期発見・早期治療をすすめています。
当院は神戸市の子宮頸癌検診指定医療機関であり、細胞診、コルポスコピー下組織診、電気メスあるいはレーザーを用いた子宮膣部円錐切除などの様々な方法を用いて子宮頸癌の早期発見、早期治療に努めています。近年、子宮頸癌はヒトパピローマウィルスというウィルスが原因であることが判明しています。このウィルスは性交で感染します。最近は20〜30歳代の若い世代に子宮頸部異形成や子宮頸癌が増加しています。病気の初期にはほとんどが無症状ですので、若い世代の人も是非子宮がん検診を受けましょう。受診すればヒトパピローマウィルス検査を行うことも可能です(自費)。子宮頸癌は早期に見つければ、大きな手術を回避できます。当科ではヒトパピローマウィルス検査を子宮頸部異形成の診断と治療後の管理に応用しています。
2.女性の生活の質を向上させる・低下させない治療に努めています。
A)良性腫瘍について
卵巣腫瘍、子宮筋腫、子宮外妊娠などの良性疾患に対しては、積極的に腹腔鏡や子宮鏡といった内視鏡手術を行っています。手術によって現在の不快な症状を緩和していくことを目指すとともに、将来妊娠を希望される方にはできるだけ妊娠しやすい条件を残します。また、手術の傷ができるだけ目立たないよう美容的配慮をしています。現在、良性腫瘍の半数以上が内視鏡手術の適応となっています。また子宮の温存を希望する患者さんに対しても薬物療法・手術療法を組み合わせることで可能な限り対応しています。B) 尿失禁・性器脱について
閉経後女性では、尿失禁や頻尿、排尿時違和感などの排尿障害が頻繁にみられ、生活上の障害となる排尿障害を持つ割合は、閉経後女性の5%以上であるとも言われています。中高年女性の排尿障害で最も頻度が高いのは、尿失禁で、特に尿失禁の50%を占める腹圧性尿失禁は年齢と共に増加し、性器脱と共に生活の質(QOL)を損なうことが多く、今後高齢化社会を迎えるにあたって、その治療がクローズアップされています。当科では、尿失禁、性器脱に対して従来の手術方法に加えて、適応がある患者さんに対してはメッシュ手術を取り入れています。メッシュ手術の利点は、何かの機能を失うことなく骨盤底を再建できるという点で、何も切除せず、腟壁を剥離してメッシュを入れるので、患者さんの身体的負担や再発率が少ないという利点があります。
3.手術前検査・自己血輸血の準備体制など
多量の出血が予測される手術では、輸血の副作用を減らすために術前に自己血を貯血しています。手術前の検査は必要があれば当院の専門の各科で診察をした上で準備をすすめる場合もあります。手術前には手術の不安が少しでも和らぐように説明をした上で同意をいただきます。入院されたあとには麻酔科や手術室の看護師も手術前に説明を致しております。
4.婦人科腫瘍に対する集学的治療
子宮癌、卵巣癌などの婦人科腫瘍の治療は、超音波診断、MRI、CT、血清マーカーなどを加えて、腫瘍の特徴と進行の程度を的確に診断しています。治療方法は、手術療法・抗癌剤療法・放射線療法などの治療法を組み合わせて副作用が少なく最も効果が得られるように工夫しています。具体的には、子宮進行期癌(頸部・体部)U期までは、広汎性子宮全摘と骨盤リンパ廓清を、卵巣癌には子宮全摘と大網切除・骨盤リンパ廓清(傍大動脈リンパ廓清)を行っていますが、患者さんに治療法の説明をしたうえで選択をしていただきます。
- 産婦人科に興味を持つ医学部生、初期研修医の皆様へ
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当科は日本産科婦人科学会の研修指定施設であり、産婦人科医として、楽しく有意義な研修を積めるよう十分配慮しています。
【産科】
当院では主に正常分娩、内科合併症妊娠などの管理を行っております。研修の目標は正常分娩をしっかりととれるようになることです。自分で妊婦健診を行い、分娩をとりあげることができるようにきっちりと指導します。
【婦人科】
当院では良性疾患のほとんどを内視鏡手術で加療しています。研修期間に応じて付属器腫瘍手術から筋腫核出術まで執刀できるような指導します。また、女性泌尿器科にも力を入れており、エキスパートによるhands on trainingを積んだ指導医のもとでTOT, TVMなどのメッシュ手術を経験できます。もちろん悪性腫瘍の治療も行っておりますので婦人科治療に関してはほとんど経験可能と考えます。
病院見学は随時受け付けています。また、進路の相談にも乗らせていただきます。 見学をご希望の方は、管理課長 江口弘一 5120sy01@kobe.hosp.go.jpまでご連絡ください。
担当医の紹介
| 医師名 | 武内 享介 産婦人科部長 |
|---|---|
| 資格取得 | 日本産科婦人科学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、 日本臨床細胞学会細胞診専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(母体・胎児)専門医、日本周産期・新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、母体保護法指定医、医学博士 |
| ひとこと | 周産期をはじめとして内視鏡手術や子宮脱の手術、悪性腫瘍の手術などを行っています。 |
| 医師名 | 西野 理一郎 婦人科医長 |
|---|---|
| 資格取得 | 日本産科婦人科学会専門医、 母体保護法指定医、日本婦人科腫瘍学会会員、日本東洋医学会専門医、 医学博士 |
| ひとこと | 日本婦人科腫瘍学会の奨める婦人科化学療法を患者様に提供できますよう頑張ります。 |
| 医師名 | 辻野 太郎 産科医師 |
|---|---|
| 資格取得 | 日本産科婦人科学会専門医、日本性感染症学会会員、医学博士 |
| ひとこと | 安全な医療をこころがけています。 |
| 医師名 | 杉本 誠 産科医師 |
|---|---|
| 資格取得 |
日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会会員、 日本内視鏡外科学会会員、日本産婦人科手術学会会員、 日本女性骨盤底医学会会員、医学博士 |
| ひとこと | 内視鏡治療を中心とした低侵襲の治療を心がけています。もちろん妊娠、出産それ以外でも不安に思うことは何でも相談してください。 |
取扱う主な疾患
- ●合併症妊娠(重症度によっては専門病院へ紹介・搬送することがあります)
- ●悪性腫瘍(卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、子宮肉腫など)
- ●良性腫瘍(子宮筋腫、卵巣腫瘍)、境界病変(子宮頚部異形成)
- ●子宮内膜症
- ●骨盤内臓脱(子宮脱、膀胱瘤など)
- ●各種疾患のセカンドオピニオン
- 専門外来
-
・外来化学療法(月、木午前)
・コルポスコピー、セカンドオピニオン(適時)
治療手技・手術
- 特殊治療
-
・腹腔鏡手術
・子宮鏡手術
・骨盤内臓脱に対するメッシュ手術
・初期子宮癌に対する治療的レーザー円錐切除術
診療実績
- 平成21年度
-
退院患者数(2009/4/1−2010/3/31)
産 科 381名
婦人科 170名
- 主な疾患別患者数
産科
| 実数 | |||
|---|---|---|---|
| 分娩様式 | 経膣分娩 | 238 | |
| 帝王切開 | 選択的帝王切開 | 48 | |
| 緊急帝王切開 | 21 | ||
| 分娩週数 | 34週まで | 0 | |
| 35週 | 1 | ||
| 36週 | 9 | ||
| 正期産(37週以降) | 293 | ||
| 産科手術 | 頚管縫縮術(シロッカー手術) | 2 | |
| 子宮外妊娠(腹腔鏡手術) | 2 | ||
| 卵管結紮(開腹) | 1 | ||
婦人科
| 疾患群 | 治療法 | 実数 | |
|---|---|---|---|
| 子宮頚癌 | 手術 | 0 | |
| 放射線化学療法 | 1 | ||
子宮頚部 |
レーザー円錐切除 | 6 | |
| 子宮体癌 | ラジカル(リンパ節郭清) | 0 | |
| 子宮全摘+両側付属器摘出+リンパ節郭清 | 3 | ||
| 卵巣癌 | 卵巣癌根治 | 3 | |
| 残存腫瘍摘出(再発) | 2 | ||
| 子宮筋腫 | 開腹 | 31 | |
| 経膣 | 0 | ||
| 核出 | 8 | ||
| 腹腔鏡 | 核出 | 0 | |
| LAVH | 1 | ||
| TCR | 2 | ||
| 良性卵巣腫瘍 | 開腹 | 9 | |
| 腹腔鏡 | 9 | ||
| 子宮脱 | 根治 | 1 | |
| その他 | 腹腔鏡 | 0 | |
| 開腹ほか | 7 | ||
| 婦人科(総数) | 83 | ||
| 外来化学療法(延べ数) | 67 | ||
子宮鏡手術について
- 利点
-
子宮鏡手術は経膣的に細い管(直径5〜7mm)を子宮の中に挿入して、テレビモニター上に映し出された映像を見ながら行う手術です。
粘膜下筋腫は過多月経や月経困難症を引き起こすだけでなく、不妊症や習慣性流産の原因となります。
現時点では粘膜下筋腫に対しては薬物療法のみでの治癒は不可能であり、手術療法が選択されます(場合によっては併用)。
従来の方法は開腹により子宮を切って、粘膜下筋腫を摘出していましたが、術後の疼痛、癒着ひいては妊孕性の低下という問題がありました。当科では、疼痛の軽減や癒着を最小限に押さえ、妊孕性の維持・改善を目的として内視鏡による手術を行っています。
また、術後早期の退院も可能となります。このように様々な利点のある手術ですが、一方では非常に細かい作業が必要となることによる制約もあります。
- 限界
-
内視鏡で手術を行いますので、病変が広範囲であったり、出血が子宮鏡のみで止血困難な場合は開腹術となる可能性があります。
手術時間が長時間になり一度の手術で治療できない場合は後日、再手術が必要となることがあります。
この手術は子宮の中に突出している筋腫に有用であり、子宮の筋肉の中の筋腫には無効です。手術後に新たな筋腫が発生したり、筋層内の筋腫が大きくなる可能性は残ります。
- 適応疾患
-
・子宮筋腫(主に子宮粘膜下筋腫)、子宮内膜ポリープ子宮筋腫(主に子宮粘膜下筋腫)、子宮内膜ポリープ
子宮腔内に突出するような粘膜下筋腫、内膜ポリープがあると不正出血や過多月経などの月経の異常を招くことがあります。特に粘膜下筋腫の場合は小さくても月経時の出血が多量になり重症の貧血をきたすことがあります。筋腫が複数存在する場合は腹腔鏡手術を併用する場合があります。
-
・子宮奇形(中隔子宮など)、子宮腔癒着症子宮内腔は妊娠において非常に重要な場所になります。子宮内腔を覆っている子宮内膜に受精卵が着床し発育します。従って子宮内腔の形の異常や写真のような癒着による内膜の「荒れ」があると、受精卵が着床・発育しにくくなり不妊症や不育症の原因になることがあります。
コルポスコピーおよび組織診断について
- 1.検査の必要性
- 子宮頚癌検診で異常が見つかった後は精密検査として「生検」が行われます。子宮頚部の初期の異常はミリ単位の異常であり肉眼では見えにくいため、適当に子宮頚部の組織を採取しても病気の部分をチェックすることはできません。もっとも悪い部分から組織を採取できないと本当の病変を過小評価してしまう可能性があります。
- 2.検査方法について
- コルポスコピーは、双眼鏡と顕微鏡を合体させたような機器です。子宮頚部を10倍くらいの大きさで観察することができます。このコルポスコピー使って行う検査がコルポスコピー検査です。内診台で膣に器具(通常の婦人科診察で使うのと同じ器具で色が違うだけ)を挿入し、外からカメラで検査を行います。コルポスコピー検査で異常があれば、その異常部分の組織を一部かじりとり、病理診断医によって顕微鏡での検査を行います。通常、所要時間は10分ほどで、ほとんど痛みはないので麻酔をかけることはありません。検査終了後に止血を目的としてタンポンを腟内に挿入します。出血が止まりにくい場合は、翌日に来院していただきます。
- 3.検査の限界・合併症
- ・
病変部がコルポスコープで見えにくい場所に存在する場合は、確定診断がつかない場合があります。
その場合は、
@再検査、
A癌検診で暫く経過を見る、
B円錐切除といった手段をとる場合があります - ・生検部位の出血は大きいタンポンで圧迫すると止血しますが、止血しにくい場合は電気焼切器で止血するか縫合することがあります。
- ・再出血について:検査が終った時に、出血していない場合でも、その日の夜などに検査の部位より再出血して、その出血がとまりにくい場合があります。ごくまれに再止血が必要となる場含があります
- 4.病理組織診断
- 採取した標本は病理検査に提出します。結果は約2週間後に判明します。
メッシュ手術について
- 中部尿道スリング手術(TVT手術、TOT手術)
-
腹圧性尿失禁とは、咳やくしゃみをしたときに、ちょっと尿が漏れる。さらには階段の登り降りや、重いものを持つ、走るといった日常の動作でお腹に力が入ったときに尿漏れをおこすことです。女性は男性に比べて尿道が短いため、お腹の底にある「骨盤底筋群」という筋肉の集まりが、お産や肥満、加齢などの原因で衰えると、膀胱・尿道が下がり、ちょっとしたことで尿漏れがおこりやすくなります。
TVT手術は腹部と膣壁に小さい切開を加え、そこから反応性の少ない人工テープを挿入し、恥骨尿道靱帯を補強し、尿漏れを改善する手術です。世界で50万人以上の人に対して施行されています。
尿漏れに対する改善率は約85%程度です。この手術では腸管穿刺や大血管の損傷など重大な合併症がわずかに起こることが報告されたため、このような重大な合併症を回避するため TOT手術が考案されました。現在では、この TOT 手術が主流となりつつあります。
TOT 手術では前述の重大な合併症はまず起こらないと考えられますが、一般的には5〜10%程度の方に術後排尿困難が生じるとされており、一時的な自己導尿などの処置や、テープの調節の再手術が必要となることがあります。また、異物の埋め込み手術になりますので、感染を起こしたような場合にもテープを除去するための再手術が必要になる可能性もあります。
- 性器脱に対するメッシュ手術
-
TENSION-FREE VAGINAL MESH(TVM)手術
加齢や分娩などにより骨盤の底で子宮や膀胱、直腸を支えている「骨盤底筋群」がゆるみ、子宮、膀胱、直腸の下垂が生じます。閉経を迎えると、女性ホルモンの減少も影響して諸靭帯・骨盤底筋の支持力が全般的に低下して骨盤臓器脱が発生しやすくなります。外科の分野でそけいヘルニアに対して多く使用された実績のあるポリプロピレン単糸を素材としたメッシュが骨盤臓器脱の手術で使用されています。化学的に合成されたメッシュは身体の中で分解・吸収されずに残り骨盤臓器の支持組織を補強します。
図に示しますように、前膣壁では膣と膀胱の間を (TVM-A)、後膣壁では膣と直腸との間を剥離して(TVM-P)メッシュを膣壁の下におき、その一部を骨盤内の強固な部位に通してメッシュの位置がずれないようにします。
メッシュは膣の壁の一部となって強固な支えの役割を果たします。本術式は、子宮を温存し膣壁も切除しないため、手術後に膣の状態が本来の自然な形態に復帰することです。術後の痛みが軽度で、子宮を摘出しないことから身体への負担も少ないために術後の快復が速やかです。メッシュの強度は長期間持続しますので、従来行われていた子宮摘出を主体とする方法にくらべて再発のリスクが少ないとされています。
本法は特殊な技術を用いるためこの術式を習得している施設は未だ少ないのが現状です。当科では様々な研究会やセミナーに参加し、最新技術を取り入れ安定した成績を得ています。 -
手術の合併症:
本手術は、子宮摘出を行う従来の手術より低侵襲で安全性が高いとされていますが、以下の合併症が生じる可能性があります。 ・膀胱の損傷:膀胱瘤が高度である場合、手術操作やメッシュにより膀胱の損傷が生じる場合があります。通常、数日の膀胱カテーテルの留置で治癒します。しかし、損傷部位が広い場合、手術中に修復操作を行ないますが、まれに術後時間を経てから再手術が必要となることがあります。
・直腸の損傷:直腸瘤がひどい場合、膣に近接する直腸を損傷することがあります。通常は手術中に開腹により修復操作を行ないますが、まれに術後時間を経てから再手術が必要となる場合があります。損傷が生じた場合は、メッシュ留置が困難となることがあります。
・術後の排尿症状:下垂した膀胱の位置が手術により変化し、術後の排尿困難、頻尿や腹圧性尿失禁といった排尿症状が生じる場合があります。症状の程度によっては泌尿器科的な治療が必要となることがあります。
ッシュによる膣びらん(5%程度):挿入したメッシュによる異物反応で膣にびらんが生じる場合があります。通常は膣剤などの保存的治療で改善しますが、帯下などの症状が強い場合はびらんを生じているメッシュを部分的に切除する場合があります。 - 再発:
本手術は、従来の手術より短・中期的には再発率が少ないと言われていますが、骨盤底筋群の弛緩が高度である場合は再発が生じることがあります。また、10年以上の長期的な成績は得られておらず、今後の加齢や骨盤内臓の解剖学的変化により再び骨盤底筋群の弛緩が生じ、骨盤臓器脱が再発する可能性があります。
腹腔鏡手術について
- 利点
-
腹腔鏡手術は、CO2(炭酸ガス)でお腹を膨らませて(気腹)、臍から直径10mmの細い内視鏡カメラを腹腔内に挿入し、テレビモニター上に映し出された映像を見ながら行う手術です。一般的な開腹手術は15cm前後の皮膚切開で行われますが、腹腔鏡手術は1cm前後の皮膚切開2〜4カ所のみで行われます。したがって、腹腔鏡下手術は皮膚切開創が開腹手術よりも少なくてすむため、美容的にも優れ、手術後の回復も早く、入院期間の短縮が可能で、早期に社会復帰できることが最大の利点です。
- 限界
- 腹腔鏡手術は利点の多い手術ではありますが、手術の遂行には種々の制約のあることも事実です。それは、開腹手術が十分な皮膚切開創(広い手術視野が得られる)から、術者が自分の目で直ちに病巣を確認し,自分の指で直接病巣を触って行う直視下手術であるのに対し、腹腔鏡手術は、術者の目で見る代わりが内視鏡カメラとテレビモニターとなり、術者の手の代わりに鉗子(内視鏡手術専用の器具)を用いる狭い視野での手術となるからです。したがって、腹腔内病変が予想以上に拡がっている場合、腹腔内での癒着が強固な場合、手術経過中のコントロールできない出血が生じた場合には内視鏡による手術の遂行が困難と判断し、手術の完遂度と安全性を考慮し、開腹手術に移行する場合があります。
- 適応疾患
-
●卵巣腫瘍
腹腔鏡にて骨盤内を観察し、卵巣嚢腫の大きさ、周囲との癒着を確認します(写真2)。良性卵巣腫瘍に対しては腫瘍摘出と回収、残存卵巣の修復を行います。腫瘍の大きさや形状、腫瘍内容液の性状、周辺臓器との癒着の状況により適切な術式を選択します。将来的に妊娠を希望する場合、30代までの女性は一般的に卵巣の腫瘍のみを核出し卵巣の正常部分を温存するように手術をします(写真3)。捻転により卵巣が壊死している場合や術中の迅速組織診断で悪性の可能性が否定できない場合、閉経期の女性の場合には卵巣そのものを摘出する場合があります。摘出した臓器は病理検査に提出し、悪性腫瘍と判明した場合は、追加治療、再手術が必要なことがあります。術前検査の時点で、悪性を強く疑わせる場合には、開腹手術を行います。
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●子宮摘出
腹腔鏡にて骨盤内を観察し、子宮の大きさ、周囲との癒着を確認します(写真4)。子宮の周囲の靱帯や血管などを処理し、膣から子宮を回収し、膣を縫い合わせます(写真5)。最後に膀胱内を観察して、尿管から流出する尿を確認します。摘出した臓器は病理検査に提出し、悪性腫瘍と判明した場合は、追加治療、再手術が必要なことがあります。縫合した膣の完全癒合には約3ヶ月を要しますので、その間は性生活を避けて下さい。
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●子宮筋腫核出
腹腔鏡にて骨盤内を観察し(写真6)、子宮筋腫の大きさ、数、位置を確認します。通常筋腫は体内で核出(写真7)、縫合(写真8)します。大きな筋腫の場合や、数の多い場合などには、下腹部に3cm程度の小切開を加えて、筋腫の核出と回収と子宮の修復をする場合もあります。なお、挙児希望の場合は、術後1〜2ヶ月位で性生活は可能になりますが、術後4ヶ月間は避妊して下さい。また、摘出筋腫の大きさ、数、場所によっては妊娠後の分娩方法は帝王切開術となる場合があります。


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●急性腹症
産婦人科の急性腹症には、卵巣腫瘍の茎捻転(ねじれること)(写真9)や破裂、腹腔内出血を伴う子宮外妊娠(写真10)などがあります。可能な限り腹腔鏡手術で対応しますが、時間帯、手術室の受け入れ体制によっては開腹術となる場合があります。
HPV検査による円錐切除後の上皮内病変管理指針
- 円錐切除標本断端陰性→2-31%で上皮内病変残存あり
- 円錐切除標本断端陽性→10-60%で上皮内病変残存なし
- 断端診断とHPV検査を組み合わせることで特異度、感度ともに向上する
子宮頸癌検診から治療への流れ




